号砲とともに第1コーナーに向かってエリートライダーたちがフルスプリント。気温は3度。雪を冠した八ヶ岳から吹き下ろす冷たい風に吹かれて、60分間のレースはギャリー・ミルバーン(Speedvagen MAAP)のホールショットで始まりました。
Raphaスーパークロス野辺山の1日目を締めくくるUCIエリート男子には84名が出場。朝方にかけて最低気温がマイナス12度まで下がったため午前中のAJOCCレース参加者は凍結コースに苦しめられることになりましたが、照りつける太陽と気温の上昇によって昼前にはコースが泥々の状態に。真っ白な雪に覆われた滝沢牧場の牧草地に抹茶色の泥コースが描かれることになりました。
スタートとともに飛び出したミルバーンには、ベルギーから帰国したばかりの全日本チャンピオンの竹之内悠(東洋フレーム)が食らいつきますが、合計8周回することになるレースの2周目に先頭はガラリとメンバー替え。小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)と沢田時(ブリヂストンアンカー)、横山航太(シマノレーシング)、そして18歳のキャメロン・ベアード(Cannondale/Cyclocrossworld.com)の合計4名が先頭パックを形成する展開になります。
前週のUCIレース関西シクロクロス@マキノ高原で勝利している沢田がベアードと抜け出すシーンも見られましたが、概ね4名が抜きつ抜かれつの(信じられないようなラップタイムを刻む)走りでレースは後半へ。すると5周目にミスした沢田を小坂がパスします。
「周回を重ねる毎にコースのいたるところが凍ってきて、思いもよらぬところで滑ってしまって攻めきれなかった。自分が転んだところで追いつかれ、逆にアタックされて距離が開いてしまった」という沢田に対し、「振り向かずにそのまま行こうと思いました。意地でも勝ちたかった」という小坂が、1週間前の鬱憤(うっぷん)を晴らすかのような独走を開始。80%ルール(トップ選手のラップタイムの80%以上遅れた選手は降車)が適用されたにも関わらず、遅れた選手たちを周回遅れにしながらハイペースで進みます。
小坂、沢田、横山が15秒前後のタイム差でそれぞれ独走しながら最終周回へ。すると沢田が舗装路の登りで一気にペースを上げて小坂のポジションまでジャンプアップ。最後の最後までもつれる接戦に会場のボルテージは一気に上がりましたが、小坂は先頭を譲りませんでした。
「最終周回の舗装路の登りで追いついたんですけど、その先でコースアウトしてしまって、また先行されてしまいました。最後の詰めが甘かった」と悔やむ沢田を再び突き放した小坂が独走フィニッシュ。拳を握りしめてフィニッシュライン通過後、駆けつけたメカニックと抱き合いました。
「地元のレースと言ってもいいほどの野辺山でようやく勝てました。毎年毎年ずっと勝ちたいと思っていたレースなので本当に嬉しい」と、地元長野県出身の小坂。「今週は身体が良い感触だったので、先週よりは良い走りができると思っていました。実際に走ってみると確かに良かった。明日(日曜日)のことは考えずにとにかく今日(土曜日)を全開で走ろうと思っていました」。
「今シーズンのシクロクロス初戦なので、まだオフロードに慣れていない部分があった」と振り返るのは3位表彰台を射止めた横山。「ツール・ド・おきなわが終わってから10日間は自転車に触らずだったので、コンディションが未知数でした。3位という結果は初戦としては100点だと思います」と、安堵が混じる喜びの表情を浮かべました。
UCIエリート男子結果
1位 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス) 58’30”
2位 沢田時(ブリヂストンアンカー) +11”
3位 横山航太(シマノレーシング) +19”
4位 キャメロン・ベアード(Cannondale/Cyclocrossworld.com) +58”
5位 ギャリー・ミルバーン(Speedvagen MAAP) +1’41”
6位 丸山厚(BOMA/ROND) +1’51”
7位 武井享介(TEAM FORZA) +2’01”
8位 ケヴィン・ブラッドフォード(SET/Coaching.com) +2’10”
9位 前田公平(弱虫ペダルサイクリング) +3’03”
10位 竹之内悠(東洋フレーム) +3’07”